おはようございます。
今日は大学の都心回帰とアパート経営について触れてみたいと思います。
投資用不動産を扱っていると八王子のアパートや学生マンションのご紹介をいただくことがあります。
でも八王子とその周辺の空き物件の数や賃料を調べてみると、満室にするにはかなり大変な事が分かってしまう。
物件の見方が管理会社の視点なので、この物件を販売して満室にするにはかなりハードルが高いエリアだということが調べると分かります。
八王子へアクセスする近隣エリアもそう。
隣の日野市もかなりアパートが多い。
こういうエリアで行うアパート経営は、もともと土地を持っている方が行うエリアじゃないかと思います。
土地代がかかっていないのであれば、満室にならなくても赤字にはならないでしょう。
逆に投資で購入した場合はどうか?
たとえ満室想定利回りが高くとも部屋が埋まらなくてはその利回りは確保できない。
戸数が少なければ尚更利回りに対する影響は大きくなるので、そうなると投資の旨みもない。
満室想定はあくまでも『想定』なので、エリアによって満室が可能かどうかの判断は重要です。
その判断基準のひとつが募集の数です。
対象の物件と似た条件で検索した時にどのくらい物件が出てくるか?
この数で貸し手と借り手のパワーバランスが分かります。
これは八王子だけのことではありません。
今回八王子をピックアップしたのは、数年前にこの募集物件の量がかなり多いという印象があったからです。
それとここ数年で大学の都心部への移転が増えているので、その影響がアパート経営に深刻な影響を与えるのではないか?
そんな事を思ったから。
実際に2016年と2017年でも多くの大学、学部が都心へ移転をしています。
そして今後移転予定の大学もある。
こうした大学の都心回帰は少子化を見据えた経営戦略でもあるのでしょう。
大学というと広大なキャンパスライフを思い浮かべますが、現在は高層ビル化しています。
大学院だけを都心の小規模ビルに持ってきている大学もある。
利便性の向上が学生確保に働いているのは各大学の志願者数の増加をみても確実。
そして社会情勢をみても景気回復を個人ベースで実感できない昨今、収入も伸び悩んでいる親の経済的負担も関係します。
2017年に発表された東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)の調査でも16年連続で仕送りが減額しており、過去最低となりました。
都内在住でも八王子まで2時間近くかかるエリアもあります。
こうした遠方への通学は下宿生ほど負担がないとは言え、定期代は高い。
ただし八王子から移転する大学ばかりではありません。
逆に新設する大学の学部もあります。
それと先月の産経ニュースでは下記の記事が載せられました。
『東京一極集中の是正に向け、東京23区内の私立大などに対し、平成31年度の定員増と学部新設を原則認めないとする新たな大学設置基準を告示した。 政府は、23区の大学の定員増を原則10年間認めないとする法案を通常国会に提出しており、この法案が成立すれば32年度から実際に規制が始まる。今回の告示はそれまでの暫定措置。昨年9月には、30年度の定員増と31年度の大学新設を規制する特例も告示している。』
都心回帰による学生(志願者)の確保を狙う大学と、流出を規制する政府
過去を遡れば両者の政治的思惑がぶつかっている状況なのですね。
そもそも八王子に大学が多いのは1960年頃の工場等制限法が大きな理由と言われています。
工場等制限法は、大都市の過密を是正するために大都市への工場立地を規制するための法律でしたが、多くの学生が集まる大学も都市の過密を助長するものとして、東京・大阪の都心とその周辺での大学キャンパスの新設・拡張ができなくなりました。
これはバブル経済による地下の上昇などもあり、都心部での土地の購入が難しくなったという背景もあると思います。
その後のバブル崩壊により経済が停滞すると、企業が都心から郊外へと拠点を移すようになりました。
一時期話題になった都心のドーナツ化現象です。
そして2002年には工場等規制法が撤廃されました。
六本木や品川、大崎、汐留、豊洲などの開発は、流出した企業や人を都心部へ呼び込もうとしたしたからです。
その後大学も都心への学部の新設が増えましたが、ここに来て規制を強化し始めたわけです。
大学としても移転とともに定員を増やせるなどのメリットがないと、移転に伴う費用負担が発生しますから今回の規制は移転計画そのものを見直さなくてはならない事になるかも知れません。
しかし既に八王子および近郊から流出した大学はありますので、その穴埋めとなる数の流入がなければ今のアパート経営は成り立たないでしょう。
家主としてはリフォームして賃料を維持するか、賃料を下げて入居者を確保するか、何らかの差別化が必要になりそうです。
しかし値下げ合戦となるとお互いの首を絞める結果にもなりかねませんので、その判断が難しいところです。
郊外のオーナーは真剣にアパート経営に向き合わなければならない時期に来ているのかもしれませんね。
我々も管理会社としてもこうした情報にはアンテナを張り、投資家の目線で先読みする力が必要になってきそうです。
本日はこの辺で。
ではまた。。。